アンカーデザインは昨年、日本科学未来館の皆様と一緒に、日本科学未来館における顧客体験・ナビゲーションについてのデザインリサーチプロジェクトを実施しました。本レポートでは、プロジェクト背景やプロジェクトの流れについてご紹介します。
本プロジェクトでご一緒させていただいた日本科学未来館は「科学技術を文化として捉え、社会に対する役割と未来の可能性について考え、語り合うための、すべての人々にひらかれた場」を設立の理念に2001年7月9日に開館した東京のお台場(江東区青海)にある国立の科学館です。地球環境や、宇宙、ロボット、計算機など、示唆に富み、魅力的な常設展に加え、ユニークな特別展や企画展が多く開催されています。
私たちは本プロジェクトにおいて、下記のような目的でリサーチ設計を行い実施しました。
人々が日本科学未来館への訪問を検討し、実際の来館を経て、日常生活に戻っていく一連の流れにおいて、どのような期待を持ち、それがどの程度満たされているのか、あるいは満たされていないのかを把握する。その流れの中で、どのような情報・媒体(スマートフォンアプリWebサイト、館内ナビゲーションなど)に、どのように触れているのかを理解し、そこに含まれる課題を洗い出すと共に、来館者のニーズを理解することで、将来のあるべき姿を描き出す。
本プロジェクトの流れは下記のようになっています。
それぞれのステップについて、下記でご紹介します。
過去に日本科学未来館に来館したことのある方32名を対象にオンラインでのインタビューを実施しました。今回のリサーチでは、インクルーシブネスを考慮し、外国籍の方や視覚障がいのある方のお話も伺っています。
日本科学未来館で働いているみなさまとワークショップを実施させていただきました。立場や担当業務の異なる様々な方にお集まりいただき、それぞれの立場から顧客体験のジャーニーマップを作成することで、未来館側の期待と来館者の期待のギャップを視覚化しました。ジャーニーマップを眺めながら、うまくいっている点、改善点、原因、改善のためのアイディアなどを書き出しました。
リサーチフェーズで実施した、インタビュー・ワークショップの内容を元に、Miroを利用して分析を行い、アイディエーションのための問いをHow Might We形式で作成しました。
作成した25個のHow Might Weから、重要度が高いと思われるものを未来館の皆様と10個ほど選出し、それらHow Might Weを利用してアイディエーションワークショップを実施しました。アイディエーションワークショップには様々な立場の日本科学未来館スタッフの方にご参加いただきました。
アイディエーションワークショップで投票数の多かった14のアイディアについて未来館の皆様と一緒にブラッシュアップさせて頂きながらイラストと文章からなるコンセプト提案書を作成させていただきました。
プロジェクト終了後、下記のようなフィードバックを頂きました。
木浦さんがお書きになった書籍は事前に拝見していましたが、ご一緒させていただく中でより実践的かつ感覚的にデザインリサーチを知る機会を頂けたと思います。
今回の取り組みは、館内でも好意的に受け入れられていると感じております。調査に続いてアイディエーションを実施したことで、参加した職員のアイディアが成果に組み込まれ、各自の視点で愛着をもって成果を捉えることができる点は、多様な考え方や立場がある組織では有効ではないかと思います。